バンドアニメが描くもの
けいおんでの大ブームが終わったあと、音楽アニメは専らアイドルを描くようになって久しかった。バンドリが始まったものの躍進には至らなかったところ、ぼっちざろっくが全てを覆し、ガールズバンドクライ 、BanG Dream! It's MyGO!!!!!、BanG Dream! Ave Mujica、バンドリ! ゆめ∞みたとバンドアニメ隆盛の時代が訪れたようにも見える。
バンドという題材の面白さ
バンドは典型的に、利害関係のある小集団を作り、人間関係を構築し、楽曲制作を繰り返し、ライブやイベントで他のバンドと競い合い、ライブハウスやレーベルと関係を結び、自らを売り込み、認知を高め、世間に認められていく…という経過を辿る。このテンプレを辿るだけでも随所に葛藤とドラマがある上、作り出したもの=楽曲を完全な形で視聴者に届けることが出来る。
バンドは大抵の場合、利益度外視で純粋な楽しさと情熱で始まり、趣味として、アマで周囲の人間を巻き込んで始まることが多く、活動も誰のサポートも受けないまま小規模で試行錯誤することが多い。この時点で価値観も目的も異なるメンバーが集うことが多く、音楽の好みも違っていることが多い。バンドが軌道に乗ったとしても、商業へ変遷する過程で、個々の価値観の衝突、人生の選択が入り混じり必然的にドラマが生み出される形になっている。
また、基本的に自らが作詞作曲するため楽曲制作や楽曲自体にドラマを載せやすく、属するコミュニティにもよるものの、日陰者の活動から始まるため成長が見えやすいこと、ライブハウスを取り巻くバンドシーンに独特の面白さがあることも挙げられる。
バンド文化の変化
これまで気軽に「バンド」という言葉を使ってきたが、バンドを取り巻く状況はここ20年で大きく変化した。20年ほど前までは、バンドといえばほぼライブハウスを中心とする文化であり、軽音部も出口は基本的に卒業かライブハウスであった。そこでは、
- ライブハウス出演
- チケットノルマの対応
- 対バンとバンド間交流
- 生活費、スタジオ代、機材、チケットノルマのためのバイト
- イベント出演応募
- デモテープ作成
- インディーズレーベルとの契約
このようなイベントが日々起きていた。しかし、日本の個人音楽クリエイター文化は、DTMの普及を前提としつつも、ニコニコ動画によって決定的に変質した。バンド活動の形は大きく変化し、Youtube/TikTokの動画・ストリーミング、SNSを通じたファンコミュニティ創出とプロモーションが大きな存在感を占めるようになった。
バンドアニメは何を描いてきたか
作品が描くシーン・コミュニティの違い
こうしたバンドを取り巻くシーンが時を追うごとに多様化した状況に応じて、どういうシーン・コミュニティを描いているかによって描くものがまったく異なる形になる。
- BECKは、伝統的なライブハウスコミュニティを中心としたバンドシーンを描いたもの。
- けいおんは、普通の学校の軽音部に形成されたコミュニティを描いたもの。
- MyGOは、ライブハウスと学校をまたがるコミュニティを描いたもの。
- Mujicaは、商業プロデュースされた演劇に近いプロジェクトを描いたもの。
- ガルクラは、ライブハウスとネット・SNSを織り交ぜた現代的なバンド活動を描いたもの。
- ゆめ∞みたは、商業プロデュースされたネットクリエイターコミュニティを描いたもの。
作品のテーマの違い
さらに、作品がバンドを描くのか、バンドを通して別のものを描くのかで大きく二分される。
バンドを描く作品
バンドそのものが変化する 演奏が物語になる シーンが描かれる 音楽活動がドラマになる
バンドそのもの ↑
BECK
ぼざろ
ガルクラ
MyGO
Mujica
↓
人間ドラマ
人間関係が中心 バンドは居場所 ライブは感情表現 バンド外のドラマも多い
もちろん完全には分けられないが、重心は違う。
現代とライブハウスを橋渡しする『ぼっち・ざ・ろっく!』
現代の作品で、SNS・動画サイトでのバズから始まるが、ライブハウス文化へ接続するという、2:8ぐらいでライブハウスシーンを描いた作品。だから昔のバンド文化を知っている人にも刺さる。
ガルクラもライブハウスとSNSをバランスよく使っているようには見えるが、そもそもどちらもほとんど描写されない。MyGOの架空のライブハウス、あんなライブハウス存在するの?と言いたくなるぐらいに謎のキラキラ感がある。
私が「バンドを描く作品」が好きな理由
私個人としては、単に青春や人間ドラマが見たいわけではない。
私は
バンドという共同体 音楽そのもの 演奏の変化 シーンの空気
そういうものを見たい。もっといえば、バンドを組んだ必然性がわかるような描写が見たい。
だからBECKやぼざろに強く惹かれる。 またこういう昔のライブハウスシーンに入っていくバンドというのは、とにかく癖が強くてバンド・音楽・楽器に対する情熱が強いことが多い。出口はたいてい売れないバンドマンなわけで、情熱がなければすぐにいなくなるしかない。こういう背水感、それに伴う覚悟、ある種の社会不適合感が心地よい。 現代クリエイターシーンとしてのバンド活動は、バンド独自の何かというよりは、イラスト、ダンス、その他配信業を含むネットアテンションを獲得するための行動一般の一部としての側面が強く、そういう意味でバンドとして描く必然性が薄い。
Discussion in the ATmosphere