怪作!映画『ブゴニア』を見てきた【感想・レビュー】

manatsu March 24, 2026
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予定と予定の間が数時間空いてしまったので、近所の映画館でやっていた映画『ブゴニア』を見てきた。ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーンとジェシー・プレモンス主演の本作は、2003年の韓国映画『地球を守れ!』のリメイク作品でもあるらしい。 映画『ブゴニア』公式サイト監督 ヨルゴス・ランティモス「哀れなるものたち」×製作 アリ・アスター「ミッドサマー」×製作「パラサイト 半地下の家族」製作陣 2.13 fri映画『ブゴニア』公式サイト あらすじ 人気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル(エマ・ストーン)が誘拐された。犯人は、陰謀論に心酔するテディ(ジェシー・プレモンス)とドン(エイダン・デルビス)の2人組。 ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じてやまない彼らの要求はただ一つ。「地球から手を引け」彼らの馬鹿げた要望を一蹴するミシェルだが、事態は思わぬ方向へと加速していき——。 感想 原作が2003年にあったことにまずビックリ 陰謀論にどっぷりと入れ込み明らかに話が通じないテディと、コミュニケーションが苦手なドン(映画内ではっきりと明言はされないが、自閉症スペクトラムを持つという設定)というキャラクターが、カリスマ経営者の女性を誘拐する…という設定からして「現代だ!」と思って見に行ったのだけれど、その原型が2003年にあったというのにまずビックリ。 「勝ち組」も「負け組」も、どちらにも与したくない PG12ということで結構エグめ・グロめのシーンがあったり、暴力シーンがあったりして「ひええ…」となることもあったのだけど、ストーリーを追っているうちに2時間があっという間だった。 いわゆる「勝ち組」の起業家、対して「負け組」の陰謀論に熱中する庶民。どちらに感情移入をするのかというと…いや、どちらにもあまり与したくはないかもしれない。 「勝ち組」と「負け組」の関係性を描こうと思ったら、どちらかを正義に、どちらかを悪に書きたくなるものだけど、『ブゴニア』はもう、両方ともイヤなやつだったりするのだ。 誘拐をされているミシェルに関しても「いや、そんな言い方したら絶対に神経を逆なでするじゃん」ということを我慢できずに言うし、脱出するためとはいえドンのことを「私が救ってあげる」なんて言葉巧みに騙そうとしていたりと、別にいい人ではない。終盤では「時間を稼ぐためとはいえ…」ということを平気でする。 もちろん誘拐犯のテディはしょーもない陰謀論者である。基本的にソースはYouTubeと怪しいWebサイト、謎のポッドキャスト。あまりに感情移入ができないタイプの人間ではある。 そんな2者のぶつかり合い。なんだか「現代過ぎる!」と思ってニコニコしてしまった。 映画ってそんなことして良いんだ! …と思っていたら最後の最後に「え、そんなこともするの?」という展開が待ち受けていて、まんまと唖然とさせられてしまった。 あとから考えると確かに伏線になり得る描写はあったんだけど、そこまでするか???と度肝を抜かれてしまった。 僕だけがこんなに唖然としてしまうのは、ちょっと悔しいのでみなさんも機会があれば是非見てほしい。 タイトルの由来と体位構造 ちなみにタイトルの「ブゴニア(Bugonia)」は、古代地中海地域の「死んだ牛の死体からミツバチが自然発生する」という神話に由来するらしい。ミツバチは再生の象徴なんだそうな。なんだそのオシャレなタイトルは! しかし、内容とタイトルの意味を重ね合わせてみると、複雑な対位構造が見えてくる。 古代においてミツバチは「再生の象徴」だった。一方で現代のミツバチは、蜂群崩壊症候群(CCD)によって絶滅の危機に瀕し、人間活動の負の影響を示すバロメーターになっている。「自然の恵み」の象徴と「人為的な破壊」の証拠が、まったく同じミツバチという生き物を通じて問われているわけだ。 この映画はもう一つの対位構造も持っている。牛から蜂が自然発生するという古代の迷信に、科学的な根拠などまるでない。でもそれは「説明のつかないものに説明をつけたい」という人間の性から生まれた物語だった。 テディが信じる「CEOはエイリアンだ」という陰謀論も、論理的には同じくらい破綻している。時代が変わっても、人間は「理解できないもの」を前にすると、荒唐無稽な物語を作り続けてしまうのだ。 そしてブゴニアとはもともと「失われたものを取り戻す」ための儀式だった。映画の中でも、テディは誘拐を「失われたものを取り戻す」ために行う、というロジックで正当化しようとしていた。 しかしそれは結果として「人間の自己破壊衝動」へと完全に転倒している。再生の神話が、破壊の寓話になってしまっているのだ。 そう考えると、このタイトルは映画のテーマをまるごと飲み込んでしまうくらい、意地悪でオシャレなものだったのかもしれない。

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